「先生、一緒に歌舞伎座に行きませんか!」
こんな嬉しいお誘いをして下さったのは、Mako’s話し方サロンの生徒さんでした。歌舞伎好きの私は迷わず「はい!」とお返事しましたが、強く惹かれたのは、その演目でした。
七月大歌舞伎の昼の部の最後は「外郎売」だったのです。
「外郎売」は歌舞伎十八番の演目ですが、俳優やアナウンサーにとっては滑舌の教本として昔から使用されているものなのです。
Mako’s話し方サロンでも最近、取り組んでいます。そこで生徒さんのお一人が歌舞伎座チケットの購入に奔走して下さいました。
今回の「外郎売」は市川海老蔵さんが息子の堀越勸玄くんと共演することでも注目されていました。6歳の勸玄くんが約4分間の早口言葉の台詞をどのように披露するのか興味津々でした。
しかし、海老蔵さんが急性咽頭炎によって休演し、勸玄くん一人で花道を歩き、堂々と舞台をつとめる様子がテレビで放送されていました。ですから、親子共演は諦めていましたが、なんと私たちが観劇する日から海老蔵さんが復帰されたのです。この幸運感に包まれながら「校外学習」のために歌舞伎座に!
花道に親子の姿が現れると、歌舞伎座が温かい微笑みに包まれました。私たち客はそれぞれ、母や父、そして祖父母のような心持ちで勸玄くんを見守っていたのです。その後の見せ場、早口言葉の台詞では皆、息を止めて勸玄くんの声に惹きつけられていました。まだ6歳ですが、堂々たるその姿は歌舞伎役者そのものでした。
手が痛くなるほどに拍手を送った私の眼は涙で溢れ、勸玄くんの姿がぼんやりと浮かんでいました。
今回の「校外学習」の後、外郎売を実際に見聞きした生徒さんたちだけでなく、
テレビで勸玄くんの勇姿を観た生徒さんにも変化が感じられるようになりました。外郎売を身近に感じ、声に力が増してきたのです。6歳の勸玄くんに多くの刺激を受けたのかもしれません。
外郎売は二代目・市川團十郎さんが生み出した演目です。300年経った現在でも生きている外郎売は実に素晴らしい台詞の数々によって成り立っています。
出来ることならば、二代目・市川團十郎さんはじめ、市川家の皆様にお礼を申し上げたい心持ちでおります。
それでは、お礼の気持ちを込めて気合の入った掛け声を掛けさせて頂きましょうか。
「成田屋!」
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